あじむぴーぷるvol.6


~安心院は日本神話のテーマパーク~  綾戸義弘さん

 <プロフィール>

1956年 福岡県八女郡広川町生れ

 

27歳の時にサラリーマンを辞めて、専業ぶどう農家になるため福岡県から安心院町へ移住。2014年で30年を迎えた「綾戸農園」は毎夏美味しいぶどうを求める観光客で賑わう。農閑期には安心院観光ガイドとしても活躍中。

Q1. 綾戸さんは、なぜ移住先に安心院町を選んだのですか?

 元々父が福岡県広川町でぶどう農園をしていたけど、農地そのものが住宅地に分散していたので農家規模では大きくありませんでした。そういう状態の農家は将来は大変だろうと思っており、当時の私はぶどう農家を継ぐつもりはなく、大学卒業をして企業に就職しました。そんな中、父のぶどう仲間が安心院がかつて国営パイロット事業で拡げたぶどう農園が衰退して農地が荒廃し遊休地なっていると教えくれました。それまで安心院の事は何も知らなかったけど、紹介してくれた方がとても熱心だったので農地を父と一緒に見に行きました。既にぶどうがなっている農園を見たりもしたんですが、なんだかピンと来なくて・・・。そしてたまたま1.5haの今の農地に巡り合ったんです。農園は何年も放置されて荒れ果てた山に還っていました。秋風にばさばさとカヤが揺れている景色にとても感銘して、心に響き決断しました。さらに、安心院家族旅行村も出来たばかりで、これから観光地として発展していくだろうと可能性を感じていました。同じぶどうを作るなら営業形態としては、観光農園しか考えていなかったので。あとは、安心院という町名にもなんとなくロマンを感じました。この漢字をあじむと読むこと自体も不思議だったし。」

Q2.ぶどう農家を続けて30年以上になりますが、農業を続けてきた信念はありますか?

「大学・サラリーマン時代は都会生活だったので、田舎で暮らしたいという気持ちが強かったです。なので、農業をするにあたっては、自然の中で、生活と一体化したスタイルでやってみたかったというのがあります。あと、ずっと農業を続けてこれているのは、ぶどう狩りに来るお客さんが年数を重ねるうちに増えてきて・・・。収入は安定していないけど、リピーターさんに支えられてここまで続けてこれました。」

三女神社から見える由布岳(中央)。左は妻垣山、右は龍王山。
三女神社から見える由布岳(中央)。左は妻垣山、右は龍王山。

Q3.ボランティアガイドで活躍する等、地元の人より安心院の神社や地形に詳しいですがいつ頃から興味が湧いたのですか?

「来た当初から、安心院町は自然に恵まれて小さいけどキレイな盆地だとは思っていました。地形や歴史について興味を持った大きなきっかけは、家の近くに三女神社というお宮があるのですが、その神社の三人娘の伝説がおもしろいなと。私も3人娘がいて、母親と奥さんという女性に囲まれた生活で、なんとなく繋がりを感じて。10年くらい前のある日、三女神社の鳥居の額の『女』という字が二人の人が肩を組んでいる、もしくは手をつないでいる様に見えたのに気が付き、文字について調べてみると、【めあわす・人を妻とする】という意味であることも知って、『三女神社は縁結びの神様なのでは!?』と思わずにはいられませんでした。

安心院町下市にある三女神社の鳥居と額
安心院町下市にある三女神社の鳥居と額

これに気が付いてから、安心院町誌やガイドブックなどで調べ始めてどんどん地域の事を知るようになりました。それまでは、日々忙しくて余裕がなかったのですが。自分で調べて周辺の神社、昔からある伝説、地形等と関連付けられてどんどん面白くなりました。特に、由布岳と各神社や古代から言い伝えのある場所の関連性にはとても興味深く思っています。最近は、由布岳が様々の場所からどんなふうに見えているか、いろんな角度から眺めて、眺めている地点、方角、周辺の山々、伝説などの関係性を探ろうと想像を巡らせいてます。

七不思議ウォーキングで三女神社をガイドする綾戸さん
七不思議ウォーキングで三女神社をガイドする綾戸さん

Q4.これから安心院をどのような町にしたいですか?

「安心院は、宇佐市と合併してだんだん寂しくなってきました。例えば、町部と家族旅行村やワイナリーの一帯が繋がってない感じがして。沢山お客さんを家族旅行村一帯から町へ誘導するには、三女神社はなくてはならない場所に感じて、こんな大きな神社があるのに勿体ないなと。いろんな観光地を見たら、お客さんは歩いています。大宰府にしろ、湯布院にしろ、全ての観光地でお客さんは文句を言わずに歩いてくれているから、安心院もそんな場所になったらいいのにな・・・というかなる可能性があります。鏝絵もあるし、掘り下げれば、由緒のある神社もあるし。例えば、家族旅行村のすぐ隣にある三女神社から対岸にある妻垣神社まで歩けば、町を通り抜けて行くし、もしくは海神社も同様で、家族旅行村とは反対側から安心院盆地やいろんな意味のある山々を眺める事もできるし、両方から見る事によって位置関係も分かってくるし。地図を見て周りの山などの位置関係を見ているとなんだか安心院盆地は風水にかなった土地に思えてきたり・・・。古事記や日本書紀を読むと安心院はまるで日本神話のテーマパークになっているような・・・!?なんかうまい具合に当てはまっていくんですよ。

綾戸さんが中心となって企画した商工会主催フットパス・仙の岩ジオコースの様子。
綾戸さんが中心となって企画した商工会主催フットパス・仙の岩ジオコースの様子。

だから、車で廻るんではなく、歩いて町を巡ってもらえる様になってほしいです。地名に残っているように、昔商店があった、古市、上市、下市、竜王の市などそれぞれの場所でお店も復活して行ってほしいです。今一番思っているのは、フットパスを安心院町に定着させたいです。前から観光協会や商工会には『歩く観光』について話しているけれども、話しているだけでは何も始まらないので、昨年から少しづつやり始めたところです。安心院の人もウォーキングしている人はたくさんいますが、そんな地元の人にも、歩いている時に盆地をいろんな角度から見てほしいです。そして、よそから来る人にも安心院の良さを伝えてほしい。私もその一人になりたいと思っています。」

綾戸農園ホームページ

綾戸さんホームページ

 

 

2014年12月

インタビュアー:宇佐市地域おこし協力隊